5/29(日) FC駒沢

reported by 川辺

東京都女子サッカーリーグ1部リーグの開幕戦はFC駒沢との対戦であった。我々にとっては初戦であったが、相手はすでに第1節、第2節を消化している状態である。40分ハーフという80分間の長い試合を制するために、様々な対策や作戦を引っさげ、この大一番に臨んだつもりでいた。昨年は出だしでつまづいてしまった事でその後に大きな影響を及ぼした。そういう意味では何としても勝つ必要のある試合である。
相手とは毎年2回程度対戦する機会があるがトップチーム同士の試合ではいつも勝ち負けの繰り返しである。過去にどちらかが2連勝したことはない。一番最近の試合では横須賀招待大会で対戦したが、その時は我々が5-1で勝利することが出来た。ということは次は負ける番なのである。この話は選手全員にもしたことであるが、過去のデータからはそのように考えられた。相手はどうであるのか知らないが、少なくともスフィーダの選手達は勝利の後の試合では『勝利を確信したかのような傲慢な意識』が存在した。過去の過ちを繰返さないためにも、そして、目標へ向けて前進するためにも、この試合の重要性は何度も伝えてきた。私も最近の試合では5-1で勝ち、しかも圧倒的な力の差を証明したことはあったが、過去にこれほど駒沢に対し警戒して試合に挑んだことはなかった。その理由として挙げられるのが、1つ目に過去に何度も前例としてあった勝利後の試合では敗戦ということ、2つ目に80分ゲームは約8ヶ月間経験していないということ、そして、過去の記憶からスフィーダ対駒沢は先制点を奪った方が勝つということから推測し、先制点を奪われた場合にはいくら力に差があっても敗戦が有得ると考えていたからである。実戦の機会から大分離れていたということで思ったような調整は出来ておらず、自分達の型からの得点パターンを失っている可能性は大いに考えられた。悪い時は本当に信じられないくらいシュートを外すことが過去に何度もあった。この試合でも自分達の型が戻りきる前に失点すれば敗戦もあるなと考えていた。これだけの不安要素を抱えている状態であっただけに負けることは十分に考えられた。
前半、開始は相手に押し込まれる展開が続いた。攻守においてポジション取りのバランスが悪く、セカンドボールを相手に拾われてしまうようなことが多かった。ただ、局面において完全に崩されているということはなく、相手もゴールの予感までは感じ取れていなかったのではないかと思う。しかし、ゴールからは程遠い位置でファールを犯してしまうとそこから夢だと思いたいようなスーパーゴールを決められてしまう。うちのGKはこの年代ではトップクラスであることは間違いないが、それでもゴールから35〜40Mもの距離のFKを決めて見せられた。10本蹴っても全て入らないと思われるような距離からのFKだった。こればっかりはGKを攻めるわけには行かない・・・信じられない圧巻のゴールだった。時間の経過と共に最終ラインのポジション取りも前に上がり、中盤での攻防においても五分五分の展開をできるようになっていき、そこから崩していけるようなシーンは増えていく。しかし、相手GKのセービングや我々のシュート精度の低さから得点には至らない。相手よりは崩しきれるシーンも多く、得点できるのは時間の問題と信じていたが、またしても1失点目とほぼ同じような位置から2本立て続けの信じられないFKを決められてしまった。素晴らしいFKであった。2本も立て続けに信じられないゴールを決められたことに感服した。相手が我々から得点を奪うのであれば、まず最初に考えられたのがFKやCKなどのセットプレー。十分に警戒はしていたし、選手達もそれは理解していたが、理解していてもどうこうなるようなジュートではなかった。こればっかりは相手選手を誉めるしかない。その後、徐々に個々の攻防において競り勝てるような場面が多くなっていくが前半を総括すると決定機の数は上回るものの、ほぼ五分五分の展開であったと言って良い。0-2で前半を終えることになる。
ハーフタイムでは1つの大きな決断をした。それは開始から怪我明けの選手を投入するということ。チームのキープレーヤーであるが数週間前に膝を痛め、一時は手術の必要性ありと診断されていた。ここまで完璧にトレーニングが出来ていたわけではないが、医者からは試合OKの許可が出ており、この選手を出場させるというギャンブルに出ないと3点を奪い逆転することは難しいと考えた。選手のパフォーマンスが100%に近い位でないと基本的には出場させることはないが、この選手においてはここまでの積み重ねがあり、チーム内での信頼も絶大だ。この選手の個人としてのパフォーマンスが悪かったとしても周囲の選手へ与える安心感や信頼感は大きいと考えた。それは必然的に流れを引き寄せる簡単な特効薬だと思っていた。当初は出場させないつもりでいたが、初戦の重要性と直接FKとはいえ2得点し乗っている相手をねじ伏せるためにはジョーカーを切る必要があった。
後半に入り流れは一気に傾く。怪我明けの選手を投入したことで左右から崩していくことが出来ていた。全体の意識が前に行き始め、押し込む時間帯が続き決定機やゴール前に迫る回数は前半よりも数段多くなった。相手が2点差を意識し過ぎ下がり気味のポジショニングになっていたようにも思うが、開始から圧倒的に押し込み数々の決定機を演出していく。しかし、本当にゴールを予感させるようなものが何か足りなかった。惜しいと思われるようなシュートシーンは何度もあった。GKと1対1になることもあった。相手の守備ブロックを崩すことも出来ていた。それでもゴールを確信させるような雰囲気には至らない。がむしゃらにゴールを目指すという姿勢が足りなかったと思う。相手は高い意識レベルで守備をしていたし、個々が必死に戦っていたと思う。我々の攻撃陣の方が総合的に経験・技術・能力においても勝っていたと思うが、それでも1得点しか出来なかったことは相手の闘争心もあるが、それ以上に我々に問題があったと考えられる。1得点後は更に意識が増し、同点に追いつこうと前掛りになるが、その直後にカウンターから1失点し、これで勝負が決まったと言える。相手の攻撃に対しては、このカウンターまでは対応できていたし、まともな状態でシュートまで行かせたシーンは1度もなかった。唯一、崩されたシーンがこのカウンターであった。結果、1-3で敗戦を喫し、痛恨の黒星スタートとなってしまった。
今回の試合を通じ改めてサッカーとは非常に難しいスポーツだと感じた。特に流れというものを読む力、流れをものにする力というものは勝敗を大きく左右する一因だ。試合において先制点というものは良くも悪くも試合の勝敗を大きく左右するものであるが、特に駒沢戦はそれが重要な意味を持つと感じた。正直なところ、私達も良くなかったが、それでも勝たなければいけない相手であった。相手も局面において素晴らしいものがあるし、見習わなければいけない部分は数々ある。また、相手はうまくこちらの戦術に対し研究し対応してきたと思う。しかし、それ以上に現在のお互いのチーム力を考えれば力の差はあったはず。事実、崩しきるシーンや決定機は圧倒的にこちらの方が多かった。それでも勝てなかったのは相手うんぬんよりも自分達に原因がある。ただ、常識では考えられないような作用が起こるのが駒沢戦。過去にお互い痛い目を見てきただけにそれはわかっていたから驚きはない。しかし、極端なところ、過去のどの駒沢戦よりも我々が2連勝する可能性の高い試合であったと言って良い。この試合に向け油断や慢心といった心の隙間は私にはなかったし、どれだけ難しい試合になるかは良く理解していた。しかし、それでも勝てなかった。この試合に関しては相手の強い心と高い意識レベルをキープした相手選手達に完敗だった。また、スーパーなFKを2本も決めた1人の選手に試合を壊された。結局、我々はまだこの程度のレベルであるということだ。まだまだレベルは低いし、グランドが少し広くなるとサポートのポジション取りが明らかに悪くなり、効果的な攻撃は仕掛けれずにいた。局面における1対1も競り負けてしまうことも多かった。相手よりも多少技術が高くても、その多少は気持ちでカバー出来るもの。多少、上手いではなく、完全に上手くないと気持ちでカバーされるのがサッカーだ。今日の自分達に足りないものが何かは明確である。また、勝てるチームに戻ることは難しいことではないが、全てにおいて強いチームになるために先を見据えて戦うのみである。1週間後には第2節が待っている。こんなところで下を向いている暇はない。第2節の勝利のみを考えて良い意味で今回の試合を踏み台にして行きたいと思う。とにかく次の試合で結果を出すことだけにこだわりたい。

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